あけましてしめくり
キロへ
あなたから「おおみそか」を贈られて、それまでのんびりと
蕎麦がわりの細打ちうどんなどすすっていたわたしは、
鏡を見て後ろ髪が思いのほかはねていることにおどろき、
出先で手袋をなくして青ざめ、やっと実家にたどりつけば
部屋はこおるほど寒く、わたわたとちっとも落ち着かないまま
年明けをむかえまして、まさに師走をしめくくる小騒ぎの
「おおみそか」を満喫したのでありました。
さて、明けまして本日は「元旦」ですけども、
やっぱりわたしは「おおみそか」のほうが好きだな。
「元旦」は学園祭のあとの片付け、とか、阪神優勝の
次の日の道頓堀(行ったことないけど)、とか、
なんだかくたびれちゃったおじさんのにおいがするよ。
だからあなたに「元旦」を贈るのはやめておきます。
なにしろ旅行の支度で疲れちゃって、わたしの部屋に
来る予定をキャンセルしちゃったくらいですからね。
いちにちいちにちをくだらなく、おろかに、要領わるく、
それでもだいじに、いっしょうけんめいに、おもしろおかしく
過ごしていこう、キロ。
そういう時間がふくふくと流れているこの本を贈ります。
メートルより
- 作者: 谷川俊太郎
- 出版社/メーカー: マドラ出版
- 発売日: 1994/09/01
- メディア: 単行本
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一月一日
くわしい地図書いてください
その家へは行ったことがないのだから
あ ちょっと待って
靴が脱げてしまった
と 若き日のニーチェは言った
『谷川俊太郎「詩めぐり」』より